永遠に語り継がれる名車     『ISUZU Bellett』        その魅力に迫る!!


第1回  『いすゞ・Bellett』誕生 〜 (初期)パートT


いすゞベレット(社内開発記号−SX 以下SX)の開発がいよいよスタートした。
与えられた開発時期はわずか3年あまり。そのSXに求められたものは、それまでの常識を覆す
革新的乗用車技術の結晶であった。日本初の高速道路開通も目前。
本格的高速ツアラーに賭けたいすゞエンジニアたちの戦いが、いままさに始まったのだ。


第1章 〜 いすゞ・ベレット誕生秘話に迫る 〜

 いすゞ・ベレット(以下SX)の開発に際しては課題が2つあった。ひとつは昭和36年末に完成が予定されていた藤沢工場でヒルマンの生産が終わったあともラインが空かないようにと開発のタイムリミットがあったこと。もうひとつは早くも輸出を考えたクルマとすることであった。
開発にあたる2年前の昭和32年の秋いすゞ自動車・技術部次長は約2ヶ月間ヨーロッパに出張し、ヨーロッパで開かれたモーターショーを視察している。この視察を元に企画案が昭和35年2月頃大網が決定した。内容は次の通りである。


*1000〜1500ccクラスとする                            
*ディーゼルエンジンも載せられること                         
*トラックのバリエーションがつくり易いようにフロントエンジン、リヤドライブとする
*月産3000〜5000台ペース目標                          
*価格は3年後の値下がりを見込んで他車並以下に設定する           
*左ハンドルをはじめ、各種応用型をあらかじめ見込んだ設計をする       

 しかし、トップが経営スケジュールの観点から決めたSXの発表時期は昭和38年の秋。あと3年と少々しか残された時間はなく、更にいすゞ自動車としてはヒルマン・ベレルに次ぐ第3弾とはいえ全くの新開発車種である。
それだけにこの開発日程の厳しさはかなりのものだった。加えてその短期間内に国産車としてはほとんど例のない後輪独立懸架、前ヒンジのボンネット、当時の主流であったコラムシフトの代わりにスポーティ感覚のフロアーシフトを採用するなど、数多くの新機軸を盛り込もうとしていたのである。
こうして設計がスタートして1年後の昭和36年10月に1次試作車の製作が始まった。また同時期に1次試作車と並行して生産車となるべき2次設計が開始されていた。



(プレゼンテーション用に作ったベレットの木型モデル)

 この頃、日本でもデザインの重要性がようやく認識されるようになり、工業デザインあるいはインダストリアルという言葉がしばしば聞かれるようになった。しかしどんなに優れたデザインでも、作りにくいものであってはならないことをベレルでの苦い体験から学んだデザイナー達はSXのデザインにあたってまず、工場に迷惑のかからない生産性のいいものにすることを第1条件とした。
SXの基本的なスタイリング・コンセプトは当時の常識を破る新しいもので多くの乗用車デザインがボディ側面の上方3対7ぐらいの高さにアクセントラインを置いていたのをひっくり返して、下の方に持っていったのもそのひとつの現れであろう。卵型のイメージによる楕円曲面で構成されたボディ本体に視界の良いグリーンハウス(クルマを外から見て、窓下線から上のガラス部分とルーフ、ピラーを含めた部分をいうデザイン用語)が乗り、センターピラーも傾斜をもたせ、国産車として初のフラッシャーランプをつけるなど、多くのデザイン上の試みが盛り込まれた。
当時の常識だった未舗装のガタガタ道もこなせるが、それよりも高速ツーリングが快適にできるクルマにしたい。そのためには、重心を下げ空気抵抗を減らし、操縦性・走行性を格段にいいものにしようとした設計側の意図を見事にカタチにしたのがSXのデザインであった。
いずれにせよ、いすゞ・ベレットが日本の自動車デザイン史上のエポックメーキングなクルマであったことは間違いないところだ。




第二章 〜いすゞ・ベレットの発売背景と特徴〜

 かつて国産中型車の標準はクラウン・セダリックで代表された1.5g級であったが、法の改正に伴い主力が2g級に移り、1.5g級で残ったのは僅かにいすゞ・ヒルマンとトヨペット・コロナの2車であった。しかしいずれもタクシー用には不向きで、オーナー用としてもどちらかといえば女性向きというイメージが強く、最も手頃なサイズながら販売成績の面からは国産車の中で最も弱体なクラスであった。
当時の噂ではブルーバードの新型もこのクラスをねらっているといわれるが、それに先駆けていち早く名乗りをあげたのが昭和38年6月に発表されたいすゞ・ベレットであった。



(昭和38年に発表された いすゞ・ベレット1500デラックス)

 ヒルマンで確立したオーナー側とベレルディーゼルで実績をあげつつあるタクシー向けという2つの相反する需要を目論んでいるわけで、機構面からも積極的にスポーティーなオーナー向けとタクシー向けを区別していることが、いすゞ・ベレット最大の特徴になっていた。
ボディは根本的にはトヨペットのコロナとほとんど同サイズの4ドア5人乗りのセダン1種であったが、内外の仕様によりデラックスとスタンダードに区別される。様々な各種の要素を組み合わせることによってスポーツ風なものからタクシー用まで実に24種類のモデルが選択できるようになった。
更に特筆されるのはサスペンションで前は普通のコイルとウィッシュボーンによる独立であるが、後ろにはこのクラスの国産車としては初の独立式を採用しロードホールディングの向上を図っていた。
車輌重量はベレット1500で915kg・同デラックスで930kg、1800ディーゼルで990kg・同デラックスで1000kg、MAXスピードはガソリン車で137km/hディーゼルで110km/h・同デラックスで104km/h、メーカーによればガソリン車のSS1/4マイル所用時間は21.6秒と加速性能も1.5gクラスでは群を抜いていた。メーカーによる燃費率はガソリン車で18km/g・ディーゼル車で21km/gであった。


★主なデータ
                    

ホイールベース
トレッド前/後
全      長
全      巾
全      高
最 低 地 上 高
車 輌 重 量
エンジン(ガソリン)



(ディーゼル)




ク ラ ッ チ
ギアボックス

最終減速比(標準)
タイア(標準)

最 高 速 度
登坂能力 sinθ
2350mm
1220/1195mm
4090mm
1510mm
1390(デ1405,デD1390mm)
205mm(デ220mm,デD1000kg)
915kg(D930,デ990,デD1000kg)
水冷直列4気筒OHVボアストローク79×75mm
総排気量1471cc
圧縮比7.5,最高出力63HP/5000rpm
最高トルク11.2mkg/1800rpm
水冷直列4気筒OHV予熱焼室式ボア×ストローク79×90mm
総排気量1764cc
圧縮比22.0
最高出力50HP/4000rpm
最大トルク11.2mkg/2000rpm
乾燥単板  機械操作
4速  2,3,4 速シンクロメッシュ
1st 3.746, 2nd 2.320, 3rd 1.508,top 1.000
3.778(デ4.111)
6.00−13−4P
(デ5.60−14−4P,デD6.00−13−4P)
137km/h(デ110km/h,デD104km/h)
0.405(D 0.400, デ 0.395, デ 0.413)




第3章 〜 いすゞ・ベレット 新たなる挑戦 〜

 昭和38年10月、第10回東京モーターショーが開催された。ここでいすゞ自動車は同年6月に発表になったばかりの1500cc級サルーン・ベレットをベースとして設計された4座スポーツクーペ・ベレット1500GTを試作品として発表しました。
ショーに出品してあったスポーツカー・プロトタイプの中ではデザイン的にもっとも現実性があり、このまま生産化してもおかしくないほどだった。
モノコック・ボディのフロアユニット、サスペンションはベレットと基本的に共通であり、それどころかルーフを除いたウエストラインから下のボディシェルまで(むろんドアは異なるが)ベレット・サルーンと同じプレスを使っていた。サスペンションはいうまでもなく全輪コイルによる独立式である。
フロントはダブルウィッシュボーンタイプ、リヤはコルヴェアに酷似したセミ・トレーリングAアームが固定長のスウィングアクスルを支え、急旋回の際内側のタイヤが浮き気味になるのを防ぐために、横置一枚リーフのコンペセイターが付加されている。ホイールベースは2350・全長3990・全巾1495全高1300mm、エンジンはベレットの1471にツインSUをつけるなどして80HP/6000prm、11.3mkg/4000rpm(標準は63HP/5000rpm、11.2mkg/1800rpm)の高速トルク型にチューンされている。4速ギヤボックス、ファイナルのギヤ比は不明だが、タイヤは乗用車より径の大きい5.60−14が用いられている。
公表された性能はトップスピード160km/h、登坂能力0.406sinθである。ベースになったベレットが非常に良い操縦性を持つ車だけに、このGTの綜合的な走行性はかなり高いものと評価された。





(ベレット1500GTは、1500cc・80馬力・最高時速160キロを越え
ご覧のようなスマートなデザインになっております)

今回はここまでです。次回の第四章からも是非ご期待下さい。
第4章はこんな下記内容を特集します

次回予告 

■ モータリスト待望の
   ベレット1600GTの
      発売を開始しました ■

いすゞ自動車では、4月6日、本格的な国産GTカーとして、
いすゞ・ベレット1600GTを発表、97万円(東京店頭渡、スペア工具タイヤ付)で4月
28日より発売することになりました。

このベレット1600GTは、ベレット1500の高性能をさらに発展されたクーペスタイルの
本格的GTで、2ドア、オールウェザータイプのスマートなボディー、1600cc、88馬力の
ツインキャブレーター付高速型エンジンは、最高速度160km/hをマークします。    

運転席正面にはスピードメーターとタコメーターを取り付け、諸計器を中央のコンソールに
まとめると共に、シフトレバーはリモート・フロア・チェンジで短くて操作しやすく、さらに
リクライニング・バケット・シートの採用などスポーティーなムードにあふれたモータリスト
待望の車です。詳細はどうぞ、最寄りのいすゞ販売店へ。
(昭和39年4月の新聞広告より・・)

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尚、今回の特集で使用しているカタログ・記事等は、「ベレGクラブ」の大場さん
大切に集めていらした貴重な資料をお借りして作成しております。

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